折々の言葉

婦人之友社刊「羽仁もと子著作集」の中から、心に響く言葉をお届けします


羽仁もと子と 夫 羽仁吉一
羽仁もと子と 夫 羽仁吉一

両性の融和
 
ひとり年若い同士ばかりでなく、子供の時から老年に至るまで、男性と女性の間には、相互いにひきつけられる力があります。その自然に従って、人生の旅路が営まれなくてはならないでしょう。世界の大勢が、今著しくこういう理想に向かって動きつつあることは喜ぶべきことです。それに比べると、我が国の社会は、この大切な問題についての、まず十分な理解がおくれています。
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社会万般の制度はみな男のつくったもので、その運用もまた男子の手にゆだねられています。文学も美術も社交も、女は員に備わることがあっても、やはり男のものです。日本の社会はちょうど女手のない家のようなものかと思います。
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人生のすべての仕事には、みな必ず男性味と女性味を含んでいるようです。男性的の方面と女性的の方面とがまざり合っているようです。そうして世の中が文化すればするほど、その男性味も女性味も共に発達して、偉大な調和を現わしてゆくように思います。

男子ばかりで勝手に造っている社会は、男性がそこでわがままと堕落をするのに都合のよい社会です。すなわちそれが男自身の本当の発達のためにもならない社会です。

それゆえ男子ばかりで勝手に造っている社会は、真の男性味の発揮されている社会ではないのです。同時に女が家の中にばかり閉じこもっていても、それは女性の本当の発達に都合のよい境遇ではありません。

小さくても志を持っている女同志がまず手を携えて、女のしなくてはならないことを、もっと本気にするのでなければ、日本の国はいつになっても女手のない国になりましょう。そうして男も女も共に発達することの出来ない社会になりましう。

羽仁もと子著作集『思想しつつ生活しつつ(中)』第三巻

:両性の融和・・・・・より抜粋